痩せる先にあるもの

さて、いままでシリーズでお伝えしてきたのは痩せる=体内の脂肪を排出することです。

一旦体内に蓄積された脂肪は二酸化炭素として呼吸でしか排出されないという、

物質収支の考え方を取り入れることで、痩せるという具体的イメージを持ってもらうことが目的です。

今回は医師らしく、痩せた先にあるメリットを語ろうと思います。
もちろん整容が改善することで、気持ちが上向きになったりする効果も無視できませんが。

パッと思いつく限り、肥満に直接関係する疾患を挙げてみたいと思います。

腰痛、膝痛、変形性膝関節症、高血圧、動脈硬化、睡眠時無呼吸症候群、糖尿病、高脂血症、癌
が直接のリスク因子となります。

さらにそれらに付随する病気としては、
心筋梗塞、心不全、脳梗塞、脳出血、腎不全、自律神経失調、末梢循環不全、網膜症 etc・・・
キリがないですね。

まさに肥満は万病の元となります。
大体が決定的に悪いところはない、体調不良の原因となります。
また、怖いのがこれらの病気が重なるとそれぞれの病気を悪くすることです。

例えば睡眠時無呼吸症候群は高血圧を悪くしますし、糖尿病、高脂血症は動脈硬化を促進し、さらなる高血圧を引き起こします。腰や膝が痛くなれば、運動も億劫になり、さらに肥満を助長します。
そうなると痩せたいのに痩せられないジレンマに陥り、急速に弱っていきます。

西洋医学においてそれらに個別に薬を処方することになりますが、最終的に痩せてくれたらほとんど解決するのに・・・
って思う方も中にはいらっしゃいます。

一番厄介なのはやはり糖尿病です。
糖尿病は食事中に含まれるグルコースを、細胞内に取り込むホルモンであるインスリンの効きが悪くなることで、
血管内にグルコースが残存し、血管を傷つけた結果、全身にさまざま不具合を呼び起こす病気です。

インスリンの効きが悪くなる原因は大きく二つあって、
一つはインスリンそのものが少なくなること、
もう一つはインスリンは出ているけど、体内でのインスリンに対する反応が鈍ることです。
いわゆる肥満からくる糖尿病の大半は、後者の反応が鈍ることが原因であることが多いです。

インスリンへの反応が鈍くなる原因はいろいろありますが、脂肪が体内に多く蓄積するだけでも反応が鈍くなります。
なので、痩せただけで糖尿病が良くなり、食事の変更などがなくても薬がいらなくなる方が稀にいらっしゃいます。
また筋肉はインスリン非依存的にグルコースを代謝できる器官なので、
脂肪をなくす+筋肉がつけると理想的な糖尿病の直接的治療になります。
実際に糖尿病の治療ガイドラインでも第一に行うのは食事療法+運動療法ということになっています。
まぁ、それができる人はそもそも糖尿病になりにくいのですが。

このように現代社会において健康的に痩せることは医学的にもメリットが多く、
結果として整容面だけではなく、QOLの向上や通院費による家計への圧迫を避ける意味合いも強くなります。

方法はどうあれぜひ健康的に痩せて、健康寿命を伸ばし、楽しい人生と食事を送っていただきたいと思っています。