痩せるという化学反応 〜カロリーって何?〜1
ダイエットを行う上で一番気にするワード、それがカロリー(cal)だと思います。
しかし皆さんカロリー(cal)って何かご存知でしょうか?
カロリー(cal)とは科学的には熱量の単位のことで、定義としては水1グラムを1度上昇させるのに必要なエネルギーのことを言います。ちなみに人の体重は大まかに50kgだとすると50,000gとなり、カロリー表記で表すと1,000,000calとか子供銀行みたいな数字になってしまうので、k(キロ)という接頭語をつけて、1/1000の数字で表せるようになっております。上記の数字だと1,000,000cal=1000kcalとなり、なんとなく見慣れた桁数になりますね。
つまり1000kcalは定義から計算すると、水1トン(=1000L)の水を1度上昇させたり、0度水10Lを沸騰(100℃)にさせる熱量に等しいことになります。
すごく大雑把に計算しますと、一般的な1日に必要なカロリーは1500kcal程度と言われておりますから、50kgの人間ですと30℃体温を上昇できる熱量を毎日摂取し、そして使用しているわけです。もちろん瞬間的に体温が30℃上昇したら生命活動を維持できません。24時間かけて体内で必要な化学反応や心臓や腸などの運動、脳による思考にエネルギーを消費し、その副産物として得られる熱エネルギーを体温維持のために活用しています。物質の反応だけでみるとものすごい熱量ですが、生きるという複雑なプロセスを維持するためにはそれだけで莫大なエネルギーを毎日消費しているのです。
続いて摂取カロリーです。皆さんがよく食べ物を買う時にパッケージをひっくり返して確認する数字、一体どうやって計算されているのでしょうか。過去の研究から、体内でエネルギーして消費される成分として糖分、タンパク質、脂質があることがわかりました。またそれぞれの成分は体内で糖分とタンパク質が1gあたり4kcal、脂質は1gあたり9kcalのエネルギーとして変換されることがわかりました。
これはかなりの熱量ですね。1gあたりですから、1kgの糖分タンパク質なら4000kcal、1kgの脂肪なら9000kcalですね。計算上1kgの脂肪で6日間生きられます。10kg痩せようと思ったら60日間、約2ヶ月間飲まず食わずで過ごせることになりますね。もちろん、そうはなりません。
これらの値から食品に入っている糖分、タンパク質、脂質を計算し、それぞれの食品のカロリーとしているわけです。
一方で消費カロリーとはなんでしょうか?
これにはMETsという単位が関わってきます。
1METsとは3.5mL/kg/分の酸素摂取量を有する運動量という定義で、通常人が安静にしている時の運動量です。ジョギングや筋トレなど各運動にそれぞれMETsが当てつけられており、ジョギング(7METs)、軽い筋トレ(3.5METs)などとなっております。
このMETsと運動した時間、運動者の体重を掛け合わせ、METs x Time (hr) x Weight (kg)= 消費kcalとなります。
例えば3METsの運動を1時間、50kgの人が行えば、3 x 1 x 50 =150kcalの消費カロリーと計算されます。
ダイエットを一度でも志した方ならこれらの知識は眼にしたことがあるかもしれません。そこからさらにカーボカウントなどが加わって、どんどん計算が複雑になっていく・・・なんてこともあるかも。
しかし皆さん不思議に思ったことはないですか?
なぜ体重(重さ)の話をしているのに、出てくるのは実態のないカロリー(熱量)で計算するのかと。じゃあどれくらいカロリーを消費したらどれくらい痩せるのか、そういった話は一切出てきません。皮算用で、今日は180kcal消費したから脂肪が20g減っているはずだとかするくらいです。
もう一つ、消費カロリーは食べ物の構成成分から計算されます。体の中に定着する成分の量ではありません。1gのタンパク質を摂取したら、体内に1gそのままタンパク質が吸収されるでしょうか。おそらくそのようなことはないと思います。人によって吸収効率は様々で、100kcalの食品を摂取したら実際に体内にどれくらいのエネルギーが蓄積されるかなど誰にもわかりません。
まだあります。消費カロリーはなんだかよくわからない式(1METs=3.5mL/kg/分)から計算された数値を持って、誰が決めたかわからないそれぞれのMETs数を用いて消費カロリーが推算されています。これも100kcal消費したからといって体内の脂肪が10g、糖分が2.5g消費したのを実際に計測したわけではありません。
つまり、最終目的は体重を管理したいのに、それの管理指標に一切重さの単位は登場せず、なぜか熱量という実態のない単位で計算し、摂取カロリーと消費カロリーというどちらも間接的に推算された数値を用いています。これでは現代主流となっているカロリーを用いたダイエットの数字的管理は絶望的に実態を表していないと私は思っております。
このような実態を表していない単位を用いることの弊害として、200kcal余計に摂取してしまったものを200kcalの運動で相殺しようとして、頑張りすぎて逆に足が遠のいてしまうということも起こり得ることだと思います。