紅麹に思うこと

昨今ワイドショーを騒がしている小⚪︎製薬の紅麹サプリ。

メーカー側、ユーザー側にそれぞれ瑕疵があると思いますので、医師として思うところを書きたいと思います。

事の発端は根拠となる論文があり、境界型高コレステロール血症の人に紅麹食品を摂取させたところ、プラセボ群に比べ優位に摂取期間のコレステロール値が減少しているというものです。

また、古来より日本では発酵食品は体に良いものとされており、麹もお酒やパン、醤油などに使われている身近なものという印象があります。

小林製薬などのサプリメントメーカーはおそらく世界中のこの様な健康食品になりそうな論文を探してきてはサプリメントを作っているのでしょう。機能性食品は根拠となる論文があれば申請すれば通る様ですから。

しかしいわゆる製薬の臨床試験と違い、どの様な副作用があるかなどの試験は行われていない様です。
その辺は小林製薬の脇の甘さがあったかと思います。

ただしこれはビジネスの話なので、健康被害に遭われた方は非常に気の毒だと思いますが、小林製薬がこの様なサプリを作り続ける限り、ある一定の確率で起こる事象かと思います。

一方で、私が疑問なのはユーザー側です。

紅麹はカビの一種です。そんなものから抽出したものをせっせと毎日摂取したら、身体を壊すに決まっているじゃないですか。

日本には発酵食品神話みたいなものがありますが、どれも発酵された食品を摂取しているのです。

発酵させる麹菌そのものを摂取する習慣なんて聞いたことがありません。
発酵食品という響きに惑わされて、発酵食品と菌そのもの混同して摂取するのは少し腋が甘いと思います。

しかも効果はコレステロール値の低下です。

確かに世の中にはコレステロールを下げるメカニズムが解明されており、特定の受容体をターゲットにしたコレステロールを下げる薬は存在しますが、糖尿病や高脂血症、高尿酸血症は生活習慣によってなっているのであれば、食べなければ値は低下します。
引き算の話です。
いくらサプリを足し算してもその効果はたかが知れています。

食べなければその分お金もかかりません。
その辺を楽しようとするユーザーと、そこにつけ込んでカビのエキスを売りつけるメーカーが起こした事態だとも言えると思います。

薬はリスクと言いますが、まさにその通りで濃縮した成分はどんな副作用を引き起こすかわかりませんし、その結果が今回の大事件につながっていると思います。用法用量も機能性食品のため決まっておりませんし、中には身体に良いと信じて多めに摂取していた方もいたんじゃないかと想像します。

生活習慣病は近道した結果の病気です。ぜひ更なる近道を探すのではなく、王道で治していく意識をみなさんに持ってもらいたいです。

それがなければ紅麹なんでサプリにならなかったんじゃないかなと感じました。