114回 医師国家試験 Cブロック
1 地域医療構想について誤っているのはどれか。
a 2025年の医療需要を推計する。
b 医療計画の一部として策定する。
c 構想区域は都道府県単位である。
d 病床の必要量を病床の機能別に推計する。
e 地域医療構想会議には医療保険者も参加する。
2 労働災害補償保険について正しいのはどれか。
a 通勤災害は含まれない。
b 保険者は市町村である。
c 労働災害の認定は厚生労働大臣が行う。
d 保険料は労働者と事業者の両者で負担する。
e 保険療養費は被災労働者の自己負担はない。
3 乳児の心肺蘇生法で正しいのはどれか。
a 胸骨圧迫の深さは胸の厚さの約1/2である。
b 胸骨圧迫は 60~80 回/分の速さで行う。
c 死戦期呼吸を認めたら蘇生行為を開始する。
d 2人の救助者で行う場合の胸骨圧迫と人工呼吸の比は 30:2である。
e 脈拍の触知は大腿動脈で行う。
4 乳癌の再発で、余命が1年以内であるという内容の告知を受けた入院患者が死に
たいと訴えた。
医師の対応で最も適切なのはどれか。
a 頑張れと励ます。
b 速やかに退院させる。
c ホスピスへの入院を勧める。
d 死について触れないようにする。
e 現在の気持ちについて話題にする。
5 我が国の一次予防推進の基礎資料となるのはどれか。
a 患者調査
b 人口動態調査」
c 国民健康・栄養調査
d 医師・歯科医師・薬剤師調査
e 全国在宅障害児・者等実態調査
6 日本、アメリカ、イタリア、韓国およびフランスの合計特殊出生率の1990年か
ら 2018年までの推移(別冊No.1)を別に示す。
日本はどれか。
a ①
b ②
c ③
d ④
e ⑤
7 国家資格でないのはどれか。
a 介護福祉士
b 言語聴覚士
c 理学療法士
d 臨床工学技士
e 医療ソーシャルワーカー
8 皮膚病変と疑うべき疾患の組合せで正しいのはどれか。
a Sweet病—慢性膵炎(時期)
b 環状肉芽腫—甲状腺機能亢進症
c 壊疽性膿皮症—Fabry 病
d 浮腫性硬化症—糖尿病
e 脛骨前粘液水腫 – 潰瘍性大腸炎
9 公共施設・建物におけるユニバーサルデザインの発想に基づく設備はどれか。
a 市民会館の授乳室
b 国道交差点の歩道橋
c 市役所入口の自動ドア
d 美術館のオストメイト対応トイレ
e 駅のプラットホームの点字ブロック
10 造血幹細胞の特徴で正しいのはどれか。
a 止血作用
b 貪食作用
c 酸素運就能
d 自己複製能
e 血栓溶解作用
12 食中毒について正しいのはどれか。
a 食中毒患者を診断したときは保健所長に届け出る。
b サルモネラ菌による食中毒で発熱を起こすことはない。
c 黄色ブドウ球菌食中毒の予防には食品の食前加熱が有効である。
d カンピロバクターによる食中毒の潜伏期間は2~3週間である。
e 我が国での食中毒による患者数では腸炎ビブリオによるものが最も多い。
13 入眠困難を主訴とする不眠症の成人患者に対する指導として適切なのはどれか
a「一定時刻に起床し日光を浴びましょう」
b「可能な限り早い時刻に就床しましょう」
c 「就床前にアルコール飲料を飲むようにしましょう」
d「一晩に8時間以上就床しているようにしましょう」
e 「就床後、入眠できない時はじっと眠気が来るのを待ちましょう」
14 遺伝性疾患(浸透率100%)を持つ家系図を示す。
この疾患の遺伝形式はどれか。
a 常染色体優性遺忘
b 常染色体劣性遺忘
c X連鎖優性遺忘
d X連鎖劣性遺忘
e Y連鎖遺伝
15 視野異常と疾患の組合せで正しいのはどれか。
a 管状視野—視神經炎
b 同名半盲—黄斑疾患
c 盲中心暗点—緑内障
d Bjerrum 暗点—視路障害
e らせん状視野—心因性視力障害
16 ある検査の質問内容を以下に示す。
1)お歳はいくつですか。
2)今日は何年の何月何日ですか。
3)私たちがいまいるところはどこですか。
4)これから言う3つの言葉を言ってみてください。あとでまた聞きますのでよ
く覚えておいてください。
5)100 から7を順番に引いてください。
6)私がこれから言う数字を逆から言ってください。
7)先ほど覚えてもらった言葉をもう一度言ってみてください。
8) これから5つの品物を見せます。それを隠しますのでなにがあったか言って
ください。
9)知っている野菜の名前をできるだけ多く言ってください。
この心理・精神機能検査はどれか。
a 田中・Binet 式知能検査
b リバーミード行動記憶検査
c Wechsler成人知能検査(WAIS-III)
d 改訂長谷川式簡易知能評価スケール
e 簡易精神症状評価尺度[Brief Psychiatric Rating Scale(BPRS)]
17 加齢に伴う筋力の低下、関節や脊椎の病気および骨粗鬆症などによる運動器の障
害のため移動機能の低下をきたし、要介護となる状態やそのリスクの高い状態を表
す概念はどれか。
した
a クラッシュシンドローム
b ダンピングシンドローム
c メタボリックシンドローム
d スロコモティブシンドローム
e コンパートメントシンドローム
18 被験者の検査1回当たりの放射線被ばくが最も多いのはどれか。
a FDG-PET
b 頭部単純CT
c 上部消化管造影検査
d 腹部ダイナミック CT
e 胸部単純エックス線写真
19 小学校における保健指導により一次予防が期待される疾患はどれか。
a 肥満症
b 低身長症
c 1型糖尿病
d 甲状腺機能亢進症
e 神経性食思(欲)不振症
20 日本人男性の1947年から2016年までのある死因についての年齢群別死亡率(人)
口10万対)の推移(別冊No. 2)を別に示す。死因はどれか。
a 悪性新生物
b 脳血管疾患
c 肺炎
d 不慮の事故
e 自殺
21 プロトロンビン時間が延長するのはどれか。
a 血友病
b 血小板無力症
c ビタミンK欠乏症
d von Willebrand
e IgA 血管炎《Schönlein-Henoch 紫斑病》
22 2歳0か月時の発達で遅れがあるのはどれか。
a 三輪車をこげない。
b 片足立ちができない。
c自分の姓名が言えない。
d. はさみで紙を切れない。
e 興味のあるものに指さしをしない。
23 循環は保たれているが、自発呼吸がみられない患者に緊急頭部 CT を行う場合の
呼吸管理として適切なのはどれか。
a 酸素マスク
b 経鼻エアウェイ挿入
c 気管挿管による人工呼吸
d 非侵襲的陽圧換気(NPPV>
e 緊急気管切開による人工呼吸
24 維持輸液製剤(組成:Na* 35 mEq/L、K* 20 mEq/L、CI 35 mEq/L、グルコー
ス 5.0 %)500 ml 中に含まれるエネルギー量(kcal)に最も近いのはどれか。
a 25
b 50
c 100
d 200
e 400
25 胃の正常組織の H-E染色標本(別冊No.3)を別に示す。
粘膜下層はどれか。
a ①
b ②
c ③
d ④
e ⑤
26 別の種類の予防接種を行うまでに、27日間以上の間隔をおくべきなのはどれか。
2つ選べ。
a BCG
b水痘ワクチン
c B型肝炎ワクチン
d 肺炎球菌ワクチン
e ヒトパピローマウイルス(HPVワクチン)
27 主に個人予防を目的としたB類疾病に含まれる定期予防接種の対象疾病はどれ
か。2つ選べ。
a 風疹
b 麻疹
c 百日咳
d インフルエンザ
e 高齢者の肺炎球菌感染症
28 血清LDLコレステロール値が上昇する原因として正しいのはどれか。2つ選べ。
a 肝硬変
b 1型糖尿病
c 吸収不良症候群
d 甲状腺機能低下症
e ネフローゼ症候群
23 妊娠37週の胎児および胎児付属物と正常な所見の組合せで正しいのはどれか。
2つ選べ。
a 胎児心拍数
b 推定胎児体重 1,900g/
c 洋水指数
e Biophysical profile score (BPS) = 4
30 妊娠 37週0日の妊婦に行った胎児心拍数陣痛図(別冊No.4)を別に示す。
認められる所見はどれか。2つ選べ。
a 徐脈
b 基線細変動消失
c 早発一過性徐脈
d 遅発一過性徐脈
e 変動一過性徐脈
31 法律に基づく在宅ケアについて正しいのはどれか。2つ選べ。
a ケアプランは介護福祉士が作成する。
b 人工呼吸器は在宅で使用可能である。
c 訪問介護には医師の指示書が必要である。
d 訪問診療は計画的・定期的に行う在宅医療である。
e 通所リハビリテーションには医療保険が適用される。
32 HIV 感染症の検査について正しいのはどれか。3つ選べ。
a 医師が HIV 感染症を疑う症状、所見があれば保険診療となる。
b スクリーニング検査の結果が判明するのは実施の2週後である。
c スク ーニング検査は保健所において匿名で受けることができる。
d スクリーニング検査は保健所において無料で受けることができる)
e スクリーニング結果が陽性だった場合の確認検査は、エイズ治療拠点病院で
のみ行うことができる。
33 保健所の役割はどれか。3つ選べ。
a 3歳児健康診査を
b 医療法に基づく立入検査
c 国勢調査の調査票の審査
d 地域における健康危機管理
e 人口動態統計の調査票の審査
34 女性化乳房の原因となり得るのはどれか。3つ選べ。
a 肝硬変
b 尿崩症
c 精巣腫瘍
d ACTH単独欠損症
e ドパミン受容体拮抗薬
35 3戚の女児。右肘を動かさないことを心配した祖父に連れられて来院した。自宅
で遊んでいた際、8歳の兄から右手を引っ張られた直後から右肘を動かさなくなっ
た。右肘関節の橈骨頭周囲に圧痛を認める。同部に腫脹、熱感および発赤はない。
肩関節と手関節とに異常を認めない。右肘関節エックス線写真で骨折を認めない。
適切な治療はどれか。
a NSAID
b 徒手整復
c シーネ固定
d 肘関節包切開
e 肘関節可動域訓練
36 58歳の男性。ショッピングセンターの駐車場でエンジンがかかったまま停車し、
ている自家用車を不審に思った買い物客により、運転席で死亡しているのを発見さ
れた。救急隊が現場に到着した時には既に硬直がみられたため病院には搬送され
ず、死因等究明のため司法解剖された。身長 170 cm、体重90kg。背面に死斑が高
度に発現し、硬直は全身の諸関節で強い。外表に創傷はない。脳は 1,750gで浮腫
状である。胸郭・脊椎に骨折はなく、左右胸膜腔に液体貯留はほとんどない。心嚢
に破裂はない。心重量は 610 gで冠状動脈に内膜肥厚・血栓はなく、心筋には異状。
を認めない。大動脈は Valsalva 洞から左鎖骨下動脈起始部の下 15 cm の高さにか
けて、内外膜間が解離し、両端部の内膜および中膜に亀裂がある。肺と肝臓はうっ
血しているが、臓器表面に異状はない。死後解剖前に撮影した胸部CT(別冊No.5
A)及び解剖時に心嚢を切開した際に撮影した写真(別冊No.5B)を別に示す。
最も考えられる病態はどれか。
a 肝破裂
b 肺挫傷
c 脊髄損傷
d 心筋梗塞
e 心タンポナーデ
37 1歳の女児。咳嗽を主訴に受診した。数日前から咳嗽と鼻汁があり、夜間咳嗽が
増強したため両親に連れられて救急外来を受診した。オットセイが吠えるような咳す
だという。身長80.0cm、体重10.0kg。体温38.2℃。心拍数 120/分、整。血圧は
90/58 mmHg。呼吸数 28/分。SpO2 96%(room air)。胸骨上窩、鎖骨上窩に陥没呼
吸を認める。両側胸部に軽度の吸気性喘鳴を認める。アドレナリンの吸入を行った
が症状が改善しない。
次に必要な対応はどれか。
a 気管挿管
b 吸入β2刺激薬投与
c 呼吸リハビリテーション
d マクロライド系抗菌薬投与
e 副腎皮質ステロイド全身投与
38 68 歳の男性。労作時の呼吸困難を主訴に来院した。2年前から階段の昇降です
ぐに呼吸困難が出現するようになったという。1年前から食欲もなく、半年間で体
重が4kg減少したため、心配になり受診した。喫煙歴は30本/日を45年間。3年
前から禁煙している。身長 165 cm、体重 47 kg。胸部エックス線写真で両側肺野に
著明な透過性亢進を認め、胸部CT で両肺に低吸収域を認めた。呼吸機能検査で閉
塞性障害を認め COPDと診断された。
栄養療法の方針として適切でないのはどれか。
a 塩分の過剰摂取を避ける。
b 1回の食事摂取量を減らす。
c 炭水化物主体の食事にする。
d 十分なエネルギー量を摂取する。
e 分岐鎖アミノ酸の摂取を心掛ける。
39 82歳の男性。歩行困難を主訴に来院した。IgA腎症による慢性腎不全で14年前
おから1回4時間、週3回の血液透析を受けている。2年前から歩行速度が低下し、
最近は横断歩道を渡りきれないことがある。階段昇降も両手で手すりにつかまらな
いと困難で、通院以外の外出を控えるようになったという。体重は1年前から5
kg減少し、このまま歩けなくなることを心配して受診した。身長 167cm、体重47
kg(透析直後体重46kg)。脈拍72/分、整。血圧 138/72 mmHg。心音と呼吸音と
に異常を認めない。浮腫はない。徒手筋力テストで両下肢とも4である。その他、
神経診察に異常を認めない。両足背動脈は左右差なく触知する。血液所見:赤血球
338万、Hb 11.0g/dL、Ht 33%、白血球5,200、血小板 14万。血液生化学所見:
総蛋白 6.8g/dL、アルブミン 3.6g/dL、AST 22 U/L、ALT 18 U/L、LD 178 U/L
(基準 120~245、CK 38 U/L(基準 30~140)、尿素窒素 72 mg/dL、クレアチニン
7.8 mg/dL、尿酸7.4 mg/dL、Na 138 mEq/L、K 4.2 mEq/L、CI 101 mEq/L、Ca
9.2 mg/dL、P5.6 mg/dL。CRP 0.1 mg/dL。
歩行困難の原因として考えられるのはどれか。
a 腎性貧血
b 高尿酸血症
c 高リン血症
dサルコペニア
e 閉塞性動脈硬化症
40 9歳の男児。毎年学校で行われる体力測定において、有酸素運動能力の指標であ
る往復持久走(20 m シャトルラン)の折り返し数が7歳時をピークに低下している。
この子校医に報告された。6歳:20回(19.21、7歳:26回(28.61、8歳:245
138.5、9歳:19回【48.01 (1)内は全国平均回数)。身長の伸びはよく、体重の
減少もない。本人に確認したところ毎年全力で走っているとのことである。
学校医として適切な対応はどれか。
a 運動指導を行う。
b 栄養指導を行う。
c 体育実技を見学させる。
d 医療機関への受診を促す。
e 10歳時の体力測定の結果を待って対応を判断する。
41 59歳の女性。健康診断で便潜血反応陽性を指摘され来院した。下部消化
鏡検査が施行され、上行結腸癌と診断された。CT等の画像検査で明らかな
なく、右半結腸切除を行うこととなった。身長156 cm、体重48kg。体温36.2℃
血圧 108/60mmHg。呼吸数12/分。眼瞼結膜と眼球結膜とに共に
常を認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触
知しない。血液所見:赤血球 398万、Hb 12.5g/dL、Ht 39 %、白血球 4,900、血
小板14万。血液生化学所見:総蛋白6.6g/dL、アルブミン3.8g/dL、総ビリル
ビン 0.8 mg/dL、AST 16 U/L、ALT 18 U/L、LD 184 U/L(基準 120~245)、ALP
202 U/L(基 準 115~359)、クレアチニン1.0 mg/dL、Na 141 mEq/L、K 4.0
mEq/L, CI 101 mEq/L.
周術期管理で正しいのはどれか。
a 術前48時間の絶食
b 術前3時間までの飲水
c 術中大量輸液
d 術後3日間のベッド上安静
e 術後1週間の絶食
42 48成の男性。健康診断で白血球増多を指摘され来院した。1か月前から左腹部の
膨満感を目覚していた。体温36.3℃。脈拍72/分、整。血圧126/74 mmHg。表
在リンパ節を触知しない。脾臓を左肋骨弓下に5cm 触知する。血液所見:赤血球
4430万、Hb 13.8g/dL、Ht 45 %、白血球 46,000(骨髄芽球1%、前骨髄球3%、背
髄球5%、後骨髄球 10%、桿状核好中球 15%、分葉核好中球 54%、好酸球2%、
好塩基球5%、リンパ球5%)、血小板 37万。血液生化学所見:総蛋白 6.9g/dL、
アルブミン 4.8g/dL、総ビリルビン 0.7 mg/dL、直接ビリルビン 0.1 mg/dL、
AST 20 U/L、ALT 27 U/L、LD 350 U/L(基準 120~245)、尿素窒素 18 mg/dL、
クレアチニン 0.8mg/dL、尿酸 6.8 mg/dL。腹部CT (別冊No.6)を別に示す。
治療方針を決定するために最も重要な検査はどれか。 April
a 骨髄染色体
b 骨髄組織 H-E染色
c 末梢血細胞表面抗原
d 骨髄血塗抹 May-Giemsa染色
e 末梢血好中球アルカリフォスファターゼスコア
43 76戚の男性。腹部膨満感と腹痛を主訴に立地してみて
両思と腹痛を主訴に来院した。3か月前に急性単球性白血
病(FAB分類M5)と診断され、数種類の異なる物による抗癌治療を受けた。し
かし現在まで一度も寛解に至っていない。1週前から腰背部痛が出現したため、
NSAID を内服したが効果は不十分で、昨夜からは腹痛も出現し次第に増悪して目
レ少切不能となったという。意識は清明だが面面は苦悶様である。身長171cm、
体重 54 kg。体温 37.1 ℃。脈拍 88/分、整。血圧118/78 mmHg。眼瞼結膜は貧血
様である。胸骨右縁に収縮期駆出性雑音を聴取する。四肢に皮下出血を認めない。
血液所見:赤血球 282万、Hb 8.0 g/dL、Ht 26 %、白血球 52,400(骨髄芽球 74%、
桿状核好中球2%、分葉核好中球 12%、好酸球1%、好塩基球1%、リンパ球 10
%)、血小板10万。血液生化学所見:総蛋白5.1g/dL、アルブミン 2.8g/dL、総
ビリルビン 0.9 mg/dL、直接ビリルビン 0.2 mg/dL、AST 34 U/L、ALT 37 U/L、
LD 1,350 U/L(基準 120~245)、尿素窒素 19 mg/dL、クレアチニン1.3 mg/dL、
尿酸9.8mg/dL。腹部超音波検査と腹部CTで、広範囲に腸間膜リンパ節と後腹
膜リンパ節の腫大が認められ、それによる消化管への圧迫と浸潤が疑われた。
現時点でまず考慮すべき治療はどれか。
a アルブミン製剤投与
b オピオイド投与
c 血小板輸血
d 全身放射線照射
e 薬物による抗癌治療
44 2歳の男児。生来健康であったが、発熱を主訴に母親に連れられて来院した
診察時に母親が離れても啼泣し。ない。体温38.2℃。心拍数110/分、整。血圧100
mmHg。呼吸数30/分Sp0298%(room air)。毛細血管再充満時間は2秒。
自発的に開眼しており光をまぶしがるが、視線が合わず追視をしない。
ここの患児に疑われるのはどれか。
a 頻拍
b 低血圧
c 意識障害
d呼吸不全
末梢循環障害
45 84歳の女性。腹痛のため救急車で搬入された。2日前から排便がなく腹痛と腹
部膨満感を自覚するようになった。今朝から症状が強くなったため救急車を要請し
たという。意識は清明。体温37.5.0。心拍数 98/分、整。血圧 148/94 mmHg。呼
吸数 22/分。SpO2 97 %(鼻カニューラ3L/分酸素投与下)。腹部は膨隆し腸雑音は
やや亢進し、打診で鼓音を認める。左腹部に圧痛を認めるが反跳痛はない。腹部
エックス線写真(別冊No.7)を別に示す。
まず行うべき対応はどれか。
a 降圧薬投与
b イレウス管留置
c 内視鏡的整復術
d グリセリン浣腸
e 抗コリン薬投与
46 32歳の経産婦(2妊1)。妊娠12週。出生前診断について相談するため、遺伝
カウンセリング外来に夫婦で来院した。これまでの妊娠経過に異常を認めない。28
際の時に出生した子供が Down 症候群であった。無侵襲的出生前遺伝子的検査
説明として適切なのはどれか。
a 「羊水を使って検査を行います」
b 「検査のために流産する確率は0.3%です」
c 「検査で先天性疾患の80%が診断できます」
d 「検査の結果が陽性であっても確定診断にはなりません」
e 「妊娠 16 週以降にならないと検査することができません」
47 42歳の男性。健康診断で異常を指摘されたため受診した。既往歴、家族歴に特
記すべきことはない。喫煙歴は 20本/日を13年間。飲酒はビールを 500 mL/日。
身長167cm、体重78kg、腹囲 104 cm。体温36.4℃。脈拍68/分、整。血圧
138/76 mmHg。心音と呼吸音とに異常を認めない。血液生化学所見:総蛋白7.5
g/dL、アルブミン4.2g/dL、総ビリルビン 0.6 mg/dL、AST 45 U/L、ALT 52
U/L、Y-GT 130 U/L(基準 8~50)、尿素窒素28 mg/dL、クレアチニン1.0
mg/dL、尿 酸7.9 mg/dL、空腹時 血 糖 130 mg/dL、HbA1c6.8%(基準
4.6~6.2)、トリグリセリド 250 mg/dL、HDLコレステロール 33 mg/dL、LDL コ
レステロール 142 mg/dL。 2013
まず行うべきなのはどれか。
a 降圧薬投与
b ニコチン補充療法
c 75g経口ブドウ糖負荷試験
d 生活習慣に関する詳細な聴取
e 週3回以上のジョギングの推奨
48 67歳の女性。健康診断で胸部エックス線写真の異常陰影を指摘され、精査目的に
に来院した。喫煙歴は25本/日を47年間。体温36.4℃。脈拍64/分、整。血圧
124/76 mmHg。呼吸数 16/分。Sp0297%(room air)。胸部CTで異常を
め、気管支鏡下に擦過細胞診を施行した。胸部エックス線写真(別冊No
部CT(別冊No.8B)及び擦過細胞診の Papanicolaou染色標本(別冊No.8C.)
示す。
診断はどれか。
a 腺癌
b 小細胞癌
c 大細胞癌
d 扁平上皮癌
e カルチノイド
49 29歳の女性(1妊1産)。分娩後1日で入院中である。妊娠38週0日で骨盤位の
ため帝王切開分娩となった。術中出血量は800 mLで術中術後の経過は順調であっ
た。術後の初回歩行を開始したところ、突然の呼吸困難と胸痛とを訴えた。意識は
清明。身長154cm、体重77kg。脈拍 104/分、整。血圧 128/76 mmHg。呼吸数
26/分。SpO2 92%(room air)。呼吸音に異常を認めない。10net
最も考えられるのはどれか。
a 羊水塞栓症
b 急性心筋梗塞
c 周産期心筋症
d 肺血栓塞栓症
e 急性大動脈解離
50 78歳の女性。糖尿病で地域基幹病院の外来に月1回通院している。
本人が食事の準備や部屋の掃除などに不安を感じている。独居であり、家族は遠方に住んでいるため日常的な協力は難しい。
自宅での日常生活支援を希望している時に、本人が相談する施設として適切なのはどれか。
a 診療所
b 保健所
c 特別養護老人ホーム
d 地域包括支援センター
e 訪問看護ステーション
51 35 歳の初妊婦(1妊0産)。妊娠33 週6日。妊婦健康診査のため来院した。これ
までの妊娠経過に異常を認めていなかった。脈拍 96/分、整。血圧 126/68 mmHgo
尿所見:蛋白(-)、糖(-)。子宮底長 29cm、腹囲 94 cm。内診で子宮口は閉鎖し
ている。胎児推定体重2,120g、羊水指数(AFI) 18cm。胎盤は子宮底部に位置し
ている。職業は事務職である。明日から休業を申請するという。
この妊婦の休業を規定する法律はどれか。
a 健康増進法
b 母子保健法
c 母体保護法
d 労働基準法
e 次世代育成支援対策推進法
52 28歳の初産婦(1妊0産)。妊娠 40 週0日午前0時に破水感があり、規則的な子
宮収縮が出現したため、午前1時に来院した。妊婦健康診査で特に異常は指摘され
ていなかった。来院時、児は第1頭位で胎児心拍数は正常、膣鏡診にて羊水流出を
認め、内診で子宮口は3cm 開大していた。午前5時、子宮収縮は5分間隔、内診
で子宮口は6cm 開大、児頭下降度は SP + 0 cm、大泉門は母体の右側、小泉門は
母体の左側に触知し、矢状縫合は骨盤横径に一致していた。午前9時、子宮収縮は
3分間隔、内診で子宮口は9cm 開大、児頭下降度は SP + 2cm であった。内診で
得られた児頭の所見(別冊No. 9 ①~⑤)を別に示す。
正常な回旋をしているのはどれか。
a ①
b ②
c ③
d ④
e ⑤
53 75 歳の男性。脳梗塞の既往があり、通院中である。①右半身に軽度の麻痺があ
り、②利き手は右手だが左手で食事を摂取している。③杖をついて屋外歩行は可
能。の短期記憶は問題なく日常の意思決定は自分で行える。主治医は⑤要介護1 と
考えた。この患者が介護保険を申請することになった。
下線部で主治医意見書に記載が求められていないのはどれか。
a ①
b ②
c ③
d ④
e ⑤
54 58歳の男性。1週前から両眼の視力低下を自覚し来院した。これまでに医療機
関を受診したことはなかったという。喫煙歴は20本/日を26年間。血圧120
mmHg。血液生化学所見:尿素窒素 23 mg/dL、クレアチニン1.2mg/dL、空腹時
血糖(160.mg/dL、HbA1c8.2%(基準4.6~6.2)、トリグリセリド 190 mg/dL、
HDLコレステロール 25 mg/dL、LDLコレステロール 148 mg/dL。視力は右0.1
(0.4X-3.0 D)、左0.2(0.7x-2.5D)。眼圧は右 15 mmHg、左 13 mmHg。両眼
の眼底写真、蛍光眼底写真、光干渉断層計OCT〉像および光干渉断層血管撮影写
真(別冊No. 10A、B)を別に示す。眼底写真では点状・斑状出血、硬性白斑および
軟性(桃花様)白斑を両眼に認める。光干渉断層血管撮影写真では毛細血管の減少を
両眼に認める。
診断はどれか。
a 加齢黄斑変性
b 糖尿病網膜症
c 網膜細動脈瘤
d 網膜静脈分枝閉塞症
e 網膜中心静脈閉塞症
55 78歳の男性。排尿障害を主訴に来院した。2年前から尿勢の減弱を自覚していた
という。3か月前からは頻尿および残尿感が出現し、昨日から症状が強くなり
受診した。内服薬はない。意識は清明。身長 165 cm、体重 63 kg。体温36.2℃。脈
拍80/分、整。血圧 148786 mmHg。呼吸数 16/分。下腹部に膨隆を認める。尿所
見:蛋白(-)、糖(-)、ケトン体(-)、潜血1+、沈渣に赤血球5~9/HPF、白
血球5~9/HPF。血液所見:赤血球 476万、Hb 13.8g/dL、Ht 39%、白血球
5,200、血小板24万。血液生化学所見:尿素窒素 28 mg/dL、クレアチニン4.4
mg/dL、Na137 mEq/L、K5.0 mEq/L、C1114 mEq/L。腹部超音波像 (別冊No.
11A~C)を別に示す。
まず行うべきなのはどれか。
a 血液透析
b腎瘻造設術
c 利尿薬投与
d 尿管ステント留置
e 尿道カテーテル留置
56 32歳の男性。発熱、鼻汁および咳戦を主訴に来院した。夏休みの家族旅行で1
週間東南アジアに滞在し、2週前に帰国した。来院時の現症では結膜充血、口腔内
に白色斑と全身に癒合性のある紅斑を認めた。
誤っているのはどれか。
a 保健所へ届け出る。
b ウイルス遺伝子検査を行う。
c 陰圧個室管理体制で診療する。
d 患者の受診前の行動を確認する。
e 感染予防にサージカルマスク着用が有用である。
57 43 歳の男性。自営業。すぐに機嫌を損ねて怒鳴るようになったため、妻と母親
に説得されて来院した。3か月前に父親が急逝してからしばらくの間、元気がな
く、家族と話さなくなった。1か月前から店で必要以上にたくさん仕入れをするよそっ
うになり、従業員に対して大声で怒鳴りつけるようになった。商品陳列の場所を何
度も変え、始終移動させているようになった。元来ほとんど飲酒をしなかったが、
毎晩飲酒をするようになったという。多弁で、感情の動きが激しく表出され、話題
が際限なく広がる。本人は受診について不満であり、精神的なストレスで悲観的な
考えに陥っている家族の方に治療を受けさせたいと述べている。これまでに発達上
の問題はなかった。血液検査、頭部 MRI 及び脳波検査に異常を認めない。
この患者にみられる症状はどれか。2つ選べ。
a 感覚失語
b 観念奔逸
c 行為心迫
d 連合弛緩
e 小動物幻視
58 38蔵の女性。下腹部痛を主訴に交際した5年前から月経時に下腹部痛と腰痛
を自覚するようになった。1年前から月経初日
になった。1年前から月経初日と2日目に仕事を休むようになっ
た。3か月前から月経終了後に下腹部痛と腰痛が出現し仕事を休むようになった。
月経は28日周期で整。持続5日間。現在妊娠希望はないが将来は妊娠したいと
思っている。飲酒は機会飲酒。母は子宮筋腫で子宮摘出術を受けた。身長162cm、
1Kg0 体温 36.8℃。脈拍68/分、整。血圧 108/76mmHg。心音と呼吸音と
に異常を認めない。下腹部に圧痛のある腫瘤を触知する。内診では、子宮は前屈で
正常大。左右付属器の腫瘤はそれぞれ径10cm で圧痛を認める。Douglas箇に有痛
性の硬結を触知する。下腹部 MRIの矢状断像(別冊No. 12)を別に示す。
治療法を決める上で考慮すべきなのはどれか。2つ選べ。
a 身長
b 飲酒歴
c 家族歴
d 疼痛の強さ
e 妊孕性温存の希望
59 25歳の初妊婦(1妊0産)。妊娠34週4日に周産期管理のため、自宅近くの産科
診療所から紹介されて来院した。既往歴、家族歴に特記すべきことはない。身長
160cm、体重59kg。体温36.6℃。脈拍80/分、整。血圧 120/72 mmHg。内診時
の帯下では BTB試験紙の色の変化はなかった。腹部超音波検査で胎児は頭位で、
推定体重は2,050g、羊水指数〈AFI〉は3.8cm だった。臍帯断面の超音波像(別冊
No. 13A)及びノンストレステスト〈NST》の結果(別冊No. 13B)を別に示す。)
説明として正しいのはどれか。2つ選べ。
a 「絶対安静が必要です」
b「前期破水が疑われます」
c「羊水過少が疑われます」
d「今日中に分娩にする必要があります」
e「赤ちゃんの先天的な病気の精密検査が必要です」
次の文を読み、60~62 の問いに答えよ。
46歳の女性。急性虫垂炎の手術のため入院中である。
現病歴 : 3日前に急性虫垂炎のため虫垂切除術を施行した。昨日から 38 00
発熱を認めているため、本日の朝に診察を行った。
既往歴 : 特記すべきことはない。
生活歴 : 喫煙歴と飲酒歴はない。
家族歴 : 父親が膵癌のため 68歳で死亡。
現症 : 意識レベルは JCSI-1、GCS 15(E4V5M6)。身長 155 cm、体重48 kg。
体温37.2℃。脈拍112/分、整。血圧 78/40 mmHg。呼吸数28/分。Sp0294%
(room air)。頸部リンパ節に腫脹を認めない。心音に異常を認めない。呼吸音は左
下胸部で減弱し、coarse cracklesを聴取する。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知
しない。腹部の手術創部に異常を認めない。背部に叩打痛を認めない。両下腿に浮
腫を認める。
検査所見 : 血液所見:赤血球 388万、Hb 11.2g/dL、Ht 36%、白血球9,800(桿
状核好中球 39%、分葉核好中球 45%、好酸球3%、好塩基球2%、単球4%、リ
ンパ球7%)、血小板 18万、Dダイマー3.4μg/mL(基準1.0以下)。血液生化学所
見:総蛋白6.5 g/dL、アルブミン 2.9g/dL、尿素窒素 21 mg/dL、クレアチニン
1.2 mg/dL、Na 139 mEq/L、K 4.1 mEq/L、CI 108 mEq/L。CRP 12 mg/dL、乳
酸 14 mg/dL(基準5~20)。胸部エックス線写真(別冊No. 14)を別に示す。血液培
養2セットからKlebsiella pneumoniae が検出された。
診断として最も考えられるのはどれか。
a 肺炎
b 腎盂腎炎
c 創部感染
d 急性胆管炎
e 化膿性脊椎炎
61 酸素投与とともに、生理食塩液 1,500 mL を輸液したところ、体温38.1 ℃、脈
拍96/分、整。血圧 112/64 mmHg、呼吸数 24/分、SpO2 97 % (鼻カニューラ3
1L/分酸素投与下)となった。
この患者の状態はどれか。2つ選べ。
a 菌血症
b 敗血症
c 多臓器不全
d 敗血症性ショック
e 播種性血管内凝固〈DIC》
62 抗菌薬治療を開始した。
効果判定にまず用いるべき指標はどれか。
a 呼吸数の減少
b下腿浮腫の消失
c CRP
d 白血球数の正常化
e Dダイマーの正常化
次の文を読み、63~65 の問いに答えよ。
23歳の男性。自宅で倒れているのを発見され救急車で搬入された。
現病歴 : 徹夜でゲームをしており、昨夜から母親の制止を聞かずに市販のカフ
イン含有飲料を多量に飲用していた。摂取カフェイン総量は 2,500 mg以上と推定
された。今朝、自宅で倒れているのを母親が発見し救急車を要請した。
既往歴 : 特記すべきことはない。
生活歴 : 家族と同居、一日中家にいて、外出することは少ない。3年前に退職後
は定職についていない。
家族歴 : 特記すべきことはない。
現症 : 呼びかけにより開眼、「アー」と発語はあるが問いかけには答えられな
い。痛み刺激に対して手で払いのける。体温 38.2℃。心拍数148/分、整。血圧
98/70 mmHg。呼吸数 30/分。SpO2 97 %(マスク 5L/分酸素投与下)。瞳孔径5mm
で左右差を認めない。口腔内に吐物を認める。運動麻痺を認めない。腱反射の異常
を認めない。心音に異常を認めない。両胸部に coarse cracklesを聴取する。多量
の尿失禁を認める。
検査所見 : 血液所見:赤血球 459万、Hb 15.1g/dL、Ht 44%、白血球 11,400、
血小板 25万。血液生化学所見:AST 28 U/L、ALT 24 U/L、CK 624 U/L(基準
30~140)、尿素窒素 40 mg/dL、クレアチニン 0.9 mg/dL、血糖 112 mg/dL、Na
142 mEq/L、K 3.8 mEq/L、CI 96 mEq/L。CRP 2.4 mg/dL。
63 最初に行う輸液の組成として最も適切なのはどれか。
a 5%ブドウ糖液
b Na35 mEq/L、K 20 mEq/L、CI-35 mEq/L Chone
c Na 154 mEq/L、濃グリセリン、フルクトース配合液。
d Na 30 mEq/L、K 0mEq/L、CI 20 mEq/L、L-Lactate 10 mEq/L
e Na 130 mEq/L、K 4 mEq/L、CI 109 mEq/L、L-Lactate 28 mEq/L
64 静脈路確保の次に行うべき対応はどれか。
a 胃洗浄
b 気管挿管
c 血液透析
d 血液濾過
e活性炭投与
65救急外来での処置後に集中治療室においてエコー下で右内頸静脈から中心静脈カ
テーテルを留置する方針となった。局所麻酔後にカテーテル留置のための穿刺を
行ったところ鮮紅色の血液の逆流を認めた。穿刺針を抜去したところ同部位が急速
に腫脹し始めた。血圧92/60 mmHg。心拍数 130/分、整。
直ちに行うべきなのはどれか。
a 赤血球輸血
b 昇圧薬の投与
c 局所の圧迫止血
d 逆流した血液の血液ガス分析
e 反対側でのカテーテル挿入手技の継続
次の文を読み、66~68 の問いに答えよ。
80歳の男性。ふらつきを主訴に来院した。
現病歴 : 約半年前から家族との会話に積極的に加わらなくなり、家族からの問い
かけにも答えないことがあったが、大きな声で話しかければ普通に会話ができてお
り、挨拶も自発的にできていた。約2か月前から屋内外で歩行時にふらつきがみら
れるようになり、最近、転倒するようになった。公共交通機関を1人で利用するこ
とができなくなったため、家族に付き添われて受診した。
既往歴 : 特記すべきことはない。
生活歴 妻と息子夫婦の4人暮らし。喫煙歴はなく、飲酒は機会飲酒。入浴、
トイレ動作は可能である。
家族歴 : 特記すべきことはない。
現症 : 意識は清明。身長 164 cm、体重58 kg。体温 36.6℃。脈拍72/分、整。
血圧 132/76 mmHg。呼吸数 12/分。甲状腺腫と頭部リンパ節を触知しない。心音
と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。神経診察
において、Weber 試験では左に偏位している。軽度の構音障害を認めるが、失語
はない。3物品(桜・猫・電車)の即時再生には問題ないが、遅延再生は困難であ
る。立方体の模写と時計描画試験は不正確である。上肢 Barré 徴候は陰性で、四
肢腱反射に異常を認めず、病的反射を認めない。指鼻試験で両側上肢に測定障害を
認める。歩行は開脚不安定で、つぎ足歩行は困難である。Romberg 徴候は陰性で、
表在感覚および深部感覚に異常は認めない。
検査所見 : 血液所見:赤血球 450 万、Hb 14.0 g/dL、Ht 42 %、白血球5,600、
血小板30万。血液生化学所見:総蛋白7.8g/dL、アルブミン4.0g/dL、総ビリ
ルビン1.0 mg/dL、AST 16 U/L、ALT 18 U/L、LD 210 U/L(基準120~245)、
ALP 250 U/L(基 準 115~359)、y-GT 18 U/L(基 準8〜50)、CK 80 U/L(基 準
30~140)、尿素窒素 20 mg/d、クレアチニン 0.9 mg/dL、尿酸 5.0 mg/dL、血糖
88mg/dL、トリグリセリド 150 mg/dL、HDLコレステロール 40 mg/dL、LDLコ
レステロール 140 mg/dL、Na 145 mEq/L、K 4.0 mEq/L、CI 104 mEq/L。CRP
0.1 mg/dL。頭部 MRIのT2* 強調水平断像(別冊No. 15A~C)を別に示す。
66 神経診察所見から判断される病巣として考えにくいのはどれか。
a 橋
b 海馬
c 頭頂葉
d 小脳半球
e 脊髓後索
67 高齡者機能評価簡易版(CGA7)の評価に必要な項目で読み取れないのはどれか。
a 意欲
b 情緒
c 認知機能 277
d 基本的ADL
e 手段的ADLC
68 医療面接および神経診察の結果から判断して、異常を示す可能性が高いのはどれか。
a 嗅覚検査
b 針筋電図
c 膀胱内圧
d 純音聴力検査
e 体性感覚誘発電位
次の文を読み、69~71 の問いに答えよ。
66歳の男性。胸背部痛と左上下肢の筋力低下のため救急車で搬入された。
現病歴 : 本日午前 11時、デスクワーク中に本棚上段から書類を取ろうと手を伸
ばしたところ、激烈な胸背部痛が突然出現した。その後すぐに左片麻痺が出現し、
さらに重苦しい胸痛と冷汗が出現したため、発症から 30 分後に救急車を要請した。
の既往歴 : 2年前から高血圧症で通院治療中。
生活歴: 妻と2人暮らし。喫煙歴はない。飲酒は機会飲酒。
家族歴 : 父親は脳出血のため 86歳で死亡。母は胃癌のため88歳で死亡。
現症 : 意識は清明。身長162cm、体重80kg。血圧 78/62 mmHgで明らかな
左右差を認めない。脈拍 108/分(微弱)、整。呼吸数 18/分。SpO2 99%(room air)。
頸静脈の怒張を認める。眼瞼結膜に貧血を認めない。心音は1音1音とも減弱して
おり、胸骨左縁第3肋間を最強とするIⅡ/VIの拡張期灌水様雑音を認める。呼吸音
に異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。左上下肢に不全片麻
痺を認め、Babinski徴候は陽性である。
検査所見 : 心電図は、心拍数 108/分の洞調律で、肢誘導および胸部誘導ともに
低電位で、II、II、aVfにST上昇を認めた。
ポータブル撮影機による仰臥位の胸部エックス線写真(別冊No.16A)及び6ヶ月後に撮影された立位の胸部エックス線写真(別冊No. 16B)を別に示す。胸部X線写真を見比べながら、研修医が指導医に所見や解釈を報告した。
69 適切なのはどれか。
a 「6か月前と比較して胃泡が多くなっています」
b 「本日の写真では下行大動脈が認められません」
c 「本日の写真では著しい気管の偏位が認められます」なのかな
d 「6か月前と心拡大の程度を比較するのは困難です」
e 「いずれの写真でも CP アングル〈肋骨横隔膜角〉は鋭なので胸水貯留はありません」
70 この時点で可能性が低い疾患はどれか。
a 脳梗塞
b 大動脈解離
c急性冠症候群
d 肺血栓塞栓症
e 心タンポナーデ
71 治療方針決定のために優先される検査はどれか。
a 心臓MRI
b 胸部造影CT
c 冠動脈造影 CT
d Dダイマー測定
e 心筋トロポニン T測定
次の文を読み、72~74の問いに答えよ。
76歳の女性。全身倦怠感と食欲不振を主訴に来院した。
現病歴 : 65歳時に高血圧症および骨粗鬆症と診断され、かかりつけ医にて内服
川療を受けていた。2か月前から変形性膝関節症の治療を受けていたが、立位や歩
行時の痛みが強く、ベッド上で過ごすことが増えていた。1週前から食欲が徐々に
低下していた。3日前から全身倦怠感の訴えがあり、ベッド上からほぼ動かなく
なった。同居していた家族が心配し、付き添われて受診した。
既往歴 : 74歳時に脳梗塞を発症。
生活歴 : 左上下肢の不全麻痺としびれ感が残っており、杖歩行であるが身の回り
のことは1人でできていた。喫煙歴と飲酒歴はない。
家族歴: 父親が68歳時に肺癌で死亡。
現症 : 意識は清明。身長 155cm、体重41 kg。体温36.2℃。脈拍1041分、
整。血圧 86/54 mmHg。呼吸数 16/分。SpO2.97%(room air)。眼瞼はくぼんでい
る。眼瞼結膜は貧血を認めない。口腔粘膜は乾燥している。頸静脈は虚脱してい
る。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない
下腿に浮腫を認めない。左上下肢に麻痺を認める。
検査所見 : 尿所見:蛋白(-)、潜血(-)、糖(-)。血液所見:赤血球 396万、
Hb 12.1g/dL、Ht 39%、白血球8,600、血小板25万。血液生化学所見:総蛋白
6.2 g/dL、アルブミン 3.1g/dL、AST 34 U/L、ALT 12 U/L、LD 221 U/L(基進
120~245)、ALP 352 U/L(基準 115~359)、CK 38 U/L(基準30~140)、尿素窒素
52 mg/dL、クレアチニン 2.2 mg/dL、血糖 104 mg/dL、Na142 mEq/L、K4.4
mEq/L、CI 108 mEq/L、Ca12.4 mg/dL、P3.6 mg/dL。CRP 0.2 mg/dL。山
長谷川式簡易知能評価スケールは 26点(30 点満点)。
72 入院後、病棟薬剤師が確認したこの患者のお薬手帳(別冊No. 17)を別に示す。1日
中止すべき薬剤はどれか。3つ選べ。
a 降圧薬
b 抗血小板薬
cビタミンB12
d 活性型ビタミン
e NSAID
73 適切な内服薬の調整や輸液により、全身倦怠感と食欲不振は改善したが、入院中
の診察にて、軽度の嚥下機能障害と左下肢関節の拘縮がみられた。また、家族から
の話で、かかりつけ医からの処方薬が適切に内服できていないことが判明した。
この患者の退院支援に向けて協力が不可欠な職種はどれか。3つ選べ。
a 薬剤師
b 義肢装具士
c 言語聽覺士
d 理学療法士
e 臨床工学技士
74この患者で退院後の転倒・骨折リスクを低下させるために有用なのはどれか。
a 外出の制限
b 軽い運動の励行
c 体重減量の励行
d 塩分摂取量の増加
e リン摂取量の増加